高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



「おまえはどうでもいいときは積極的にくるくせに、肝心なところで逃げる」
「それは……」
「別に責めるつもりはない。過去それなりの経験をしたなら、一度や二度安心しろと言葉を告げたところで、すぐに信頼できるものでもないのはなんとなくわかる。おまえは素直だし他人に対してまっすぐだから、傷つくのが怖いと思う自分に罪悪感を抱くのかもしれないが、それは仕方ないし気にするな」

上条さんの指先が私の頬を滑り降り、顎を持ち上げる。
すぐ目の前にある上条さんの顔に、反射的にビクッと跳ねた体を彼の腕がきつく抱き締めた。

「おまえの心配事は俺と一緒に過ごす時間に反比例して、薄れて消える。おまえはただ俺を好きでいればいい。面倒なことは考えるな」

返事をする前に唇が塞がれる。
抵抗する間もなく入り込んできた舌にぞくりとした感覚が生まれ、いつかの夜を体が思い出す。

せっかく下がった熱を上げようとする上条さんに、気付けばしがみついていた。

重なった舌から立つかすかな水音さえ聞こえる静かな部屋。

キスの合間に息をついていると、上条さんが私の顔に唇を押し付ける。
おでこ、こめかみ、瞼……とゆっくりとキスしながら「俺を拒絶するな」と静かに言った上条さんが続ける。