高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



さすがにその表現は私に失礼だろうとは思うものの、上条さんへの態度はまさにそうだった気もするので否定できない。

だから何も言わずに、ただ触れたままの手を気にしていると、上条さんが「昨日のことだが」と切り出す。

「会えない時間が続くうちに、どんどん美波の顔がチラつくようになった。どうしているかをよく考えた。おまえは理由もなく俺からの連絡を無視するやつじゃない。だから、連絡がつかないのはそれなりの事情があるんだと思っていたのに、緑川と会っているところを見たらカッとなった」

上条さんが少し責めるように私を見る。

「俺に電話する時間はないのに、緑川と会う時間は作るんだな」

昨日も同じようなことを言われたのを思い出し、慌てて首を振る。

「ち、違います。あれは、緑川さんに待ち伏せされていただけですし、そもそも緑川さんの話も上条さんとのことで……え、わっ……」

握った手を急に引かれ、座ったままバランスを崩す。
結構な勢いで上条さんの胸にぶつかってしまったのに、彼は少しも気にしていないようだった。

そのまま背中に回った両腕に抱き締められ、心臓がキュッと締め付けられる。
押し付けられた上条さんの胸から、心地よいリズムの鼓動が聞こえた。