高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



「心配しなくても、おまえは最初から頭数に入れてないし、好きに食べればいい。専門的な意見は他に頼んである」
「はい。でも……」

それでも、料理だってただじゃないし、それに私が食べたぶんは本来であれば他の誰かの食事だったのかもしれない。
ひとりぶんの専門的意見を、私のせいで得られなくなったのかもしれないと、申し訳なく思い視線を伏せた私に、上条さんが言う。

「試食会だし専門的な意見も大事だが、散々考えたメニューを食べてうまそうな顔をされたら、店側としては単純に嬉しいし自信になる。俺もひとりで食べるよりは楽しい。だから、おまえは十分役に立ってる。気にしないで好きに食べればいい」

思いがけないフォローをされ、目を見張る。
態度は偉そうなのに、私を責めずに肯定する上条さんがなんだかおかしくなる。

〝おまえ〟なんて呼ばれ方は嫌だし、普段なら〝私、おまえって名前じゃありません〟と言い返しているところだけど、不思議とそんな気にはならなかった。

六歳も上の男性を捕まえて言うのもおかしいとはわかっていても、上条さんを可愛いと思ってしまう。
思わず笑みをこぼした私に気付いた上条さんが「どうかしたか?」と聞いてくるので、首を横に振った。