高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



「佐々岡さんにそれを問われたとき、俺ははっきりとした答えが出せなかった。だから、昨日、彼女に会いに行って俺なりに出した答えを告げてきた。〝大事にしたいと思ってるし、美波が俺の手をとることをためらっているとしても手放す気はない〟と」

重なった視線があまりに真剣そのもので、鼓動がトクトクと駆け足になる。

「正直な話、これが恋愛感情かはわからない。でも俺は、おまえが喜ぶとき隣にいたいし、怖がって踏み出せないときには手を差し出したい。おまえが真っ先に頼ってくる存在でありたい。なんでもない話でも、気兼ねなく話せる、誰よりも近い存在でいたい」

私が腿の上に置いていた手を、上条さんの手が上から握る。
まだ微熱がこもっているせいか、上条さんの手がひんやりして気持ちいい。

そんな風に言ってくれるのが嬉しくて、夢なんじゃないかと涙を浮かべながら視線を返していたけれど「あの、後藤とかいう男よりだ」と続いた言葉に、目を丸くする。

どうしてここで後藤の名前が出てくるのかわからない。

「後藤は、別に……」
「おまえはあいつにはなんでも話すだろ」

たしかに同期だし仲もいいので気軽ではあるけれど、それは決して恋愛に結びつかないからこそだ。

でも上条さんは気に入らなそうに続ける。

「そもそもあいつと頻繁にふたりきりで会っているのは以前から気に入らなかった。あいつが相手じゃなくても、俺以外の人間に尻尾振って笑顔を向けている可能性を考えるとイライラする」
「尻尾……」