リビングに移り、上条さんが買っておいてくれたゼリーや、シャインマスカットやネクタリンをありがたくいただいたあと、パンもひとつ食べた。

そんな私の様子を見て、安堵の表情を浮かべる上条さんに、胸の奥がキュウウッと締め付けられる。

「薬だ。飲め」
「あ、すみません。ありがとうございます」

ペットボトルと処方された薬を差し出され、言われるまま飲む。
私からペットボトルを取り上げた上条さんは、それをローテーブルの上に置いたあと、私の隣に腰を下ろした。

ちょうど並びが先週の金曜日の夜と重なり、意識した鼓動が大きく跳ねる。

あの夜とは違い、開けたカーテンからはレース越しの柔らかい日差しが入り込んでいた。

「体調を崩していたから連絡を返せなかったんだな。責めるようなことを言って悪かった」

思いがけない謝罪をされ、慌てて首を振る。

「いえ、体調がおかしくなったのは昨日からですし。連絡を返さなかったのは……」

一度言いよどむ。
言葉を整理しているうちに苦笑いがもれた。

「情けないですけど、少し怖気づいたからです。上条さんが桃ちゃんともふたりきりで会ってることを思い出して、もしかしたら先週の金曜日の夜のことは、私が都合よく捉えていただけかもしれないって」

素直に白状する。

「あ、でも、こうやって不安になるのは上条さんが好きだからで、戸川とのことは関係ないです」

そう付け足した私をじっと見た上条さんがひとつ息をつく。