高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



「上条さん……? あの、今話しましたよね? 私はもう……」

上条さんが覆いかぶさってきたせいで逃げ道が下にしかなくなり焦る。
距離を取るためにはソファの座面に背中をつけるしかないけれど、それだと体勢的にまずいし、本格的に逃げられなくなる。

なので、ぎりぎりのところで肘をついて体を支えて見上げた私を、上条さんがじっと見つめる。

少しも視線を外してくれないせいで、心臓がバクバクとうるさい。

「あいつのせいでどれだけ傷ついたのかは知らないが、それを理由に拒否されるのは気に入らない」
「で、でも、さっき『わかる』って……」
「理屈はわかった。おまえの感情の動きも。だからもう恋愛はしないと言うなら、勝手にすればいい。でもそれは俺以外の男が相手だったらの話だ」

無茶苦茶な言い分に、焦りも忘れ思わずポカンとする。

私の過去や今の心情を色々と理解はしてくれている……はずなのに、どういう意味?

わけがわからずにいる私を見つめたままの上条さんがゆっくりと近づくので、ついには背中がソファの座面についてしまう。

「矛盾しているのはわかっている。でも、そんな理由で俺がおまえに受け入れられないのは納得がいかない」

ずっと重なっている眼差しに、胸の奥がギュッと締め付けられる。
それと同時に不安になり恐怖が浮かび上がりそうになったところで、上条さんの手が私の頬を覆った。