高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



何も悪いとは思っていない戸川は、事実も気持ちも隠さなかった。
その話しぶりから、戸川が一番入れ込んでいるのは私の友達だと悲しいことに気付いてしまった。

そこで離れればよかったのだと今は思う。

私はそういう価値観ではないからと断ればよかっただけだ。体だけの関係なんて無理だと。

でもその時の私は、ズルズルと関係を続ける道を選んだ。

単純に好きだったからというのもあるし、たぶん、戸川に依存していた部分があったんだろう。

苦しい時に、一緒にいてくれた人だったから。
手を差し伸べて、一緒に乗り越えてくれた人だったから、たとえ不純な関係だとしても傍にいたかった。

「最初は、私はそれでもいいって思い込もうとしたんです。傍にいられれば嬉しいんだからって。なのに……触れられるたびに傷ついていくみたいでした。でも、好きだったから、触れられるのが嬉しくて、あとで苦しくなるだけだとわかってても拒否できなくて……勝手にひとりで傷ついて、その繰り返しでした」

好きだからと、無防備にさらけ出していた心の柔らかい部分。
触れられるたびに伴うのは喜びではなく痛みで、気づいたら心のそこらじゅうがボロボロだった。

戸川と知り合って以来、私は上条さんと出会うまで誰とも関係を持っていない。
社会人になってから付き合い出した人とは無理だったから。