高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



名刺には社名と連絡先、上条さんの名前しか書かれていない。

さっきチラッと出た話によれば、今日のこれはどうやら試食会らしい。
上条さんは建設で関わった関係で招かれているのか、それとも料理関係に詳しい方なのか。

そもそも試食会なんて初めてなので、どういう人が招かれるのかすらわからない。
じっと見ていると、上条さんはなんてことない顔で「オーナーだ」と答えた。

「オーナー……?」
「ああ。ここ以外にも飲食店は何店舗か経営してる。系統はまちまちだが、フレンチは今回が初めてだ」

水を飲みながら言う上条さんに「そうなんですね」と一応相づちを打ちながらも、頭の中は大忙しだった。

まず、オーナーがよくわからない。
直訳すれば経営者という意味で……つまり、コンセプトなんかを考えプロデュースしたとかそういうニュアンスが近いのだろうか。

よくわからないけれど、起業してもう何店舗も経営しているのなら、上条さんはそういう仕事に長けている人なんだなと感心する。

私の会社でも、よく〝お客様のニーズを見逃さず的確に理解して商品を勧めるように〟というようなことを言っている。
上条さんはその見極めが優秀なんだろう。そうじゃなきゃ、何店舗も出せない。