高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



案内されるまま、広い部屋の中央にあるオフホワイトの布張りのソファに腰掛ける。

薄いブラウンのフローリングに置かれている家具は、ソファとダイニングテーブル、それとローテーブルだけ。
そのどれもがオフホワイトで、とても柔らかい空気を感じた。

生活感が少しもないのにそんな風に思ったのは、上条さんの気配を感じるからかもしれない。

窓の外に広がる夜景が、薄いレースのカーテン越しにぼんやりと見える。
黒い独立型のアイランドキッチンが、埋め込み式のシルバーの冷蔵庫と相まってとてもオシャレだ。

というか、目に映る光景のどこを切り取ってもオシャレでしかない。

私がメニューを決められずにいると、上条さんは適当にサンドイッチのデリバリーを注文してくれた。

実がゴロゴロ入ったフルーツサンドやローストビーフやらトマトやチキン、タマゴのサンドイッチは見た目も綺麗で、今まで食べてきたなかで間違いなく一番おいしかった。

普段だったら、また上条さんに呆れられながらも〝すごくおいしい〟と連呼していたところだ。

でも、これから聞かれるであろう質問を考えると、気持ちはちっともはしゃがず強張るばかりだった。

触れられるのも嫌われるのも怖いなんて、ずいぶんわがままだと自分自身で思う。

正直、自分がどうしたいのかわからないのだ。だから時間を置きたかったのに……こんな突然詰められるなんて思いもしなかった。