「はい」
「おまえ、男が好きだったのか」
「違います」
『なに、どっちか彼氏? それともふたりともセフレ? 高坂、見た目によらず相変わらず男好きだね。まぁ、俺も人のこと言えないけどね』
戸川があんなことを言ったから、きっと誤解されているとは思っていた。
でも、あまりに直接聞いてくる上条さんに、否定しながらもふっと笑ってしまう。
そんな私に、それまで黙っていた緑川さんが「じゃあ、さきほどの発言は戸川さんが勘違いしているだけですか?」と切り込んでくるので、眉を寄せる。
もうこの話題は終わりにしたいのに、上条さんも私をじっと見て答えを待っているから、ため息をもらしてから口を開いた。
「それも、違います……あの、これ、言わなくちゃダメですか?」
「それは高坂さんの自由ですが、ただ、隠し事をされるのを社長は嫌います」
まるで脅しに思え黙り込んでいると、携帯を素早く操作した緑川さんが上条さんに話しかける。
「社長。数分後にタクシーがくるよう手配しました。週末は予定通り休んでいただいて問題ありません。今日の商談内容については俺の方で処理しておきますので、月曜日に確認お願いします」
「わかった」
「では、俺はこれで」
私をチラッと見た緑川さんが背中を向けて駅に向かって歩いていく。
上条さんに戸川とのことを話せという意味だろうか……と考えているうちにタクシーが到着し、「乗れ」という上条さんの命令には逆らえず、仕方なく乗り込んだのだった。



