「〝上条プロダクツ、上条智司〟……」
本当に社長さんなんだな、と思いながら、私も名刺を返す。
私は事務員だから交換する機会はめったにないけれど、一応全社員に名刺は配布されている。必要ないと思いながらも持ち歩いていてよかった。
私から名刺を受け取った上条さんは「高坂美波……保険会社勤務か」と呟いた。
「はい。大学を卒業して就職して、今年で三年目になります。二十五歳です」
上条さんは……と聞きそうになって、すんでのところで止める。
出逢って数分で色々聞くのは失礼だと思ったからだったけれど……。
「俺は、大学を出て一度就職して、起業した。会社設立から数えると、今年で七年目だな。年齢は三十一だ」
上条さん自身は気にしないのか、すんなりと教えてくれて拍子抜けする。
上条さんは見た目も雰囲気もクールというか、もっと言えば素っ気ないので、あまり自分のことは話したがらない人かと思っていたけれど、そうでもないらしい。
こうして向き合って食事をするなら、あまり踏み込んではいけない話題ばかりだと緊張してしまうので、上条さんの態度に少しホッとした。
「それで、あの、上条さんはこのお店とどんな関係があるんですか?」



