高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―




上条さんの運転する車に揺られながら窓の外を眺める。

街頭や店舗の明かりが流れていく様子を見ていると、それまで黙っていた上条さんに話しかけられた。

「ずいぶん静かだな。気分は?」
「あ、気分は大丈夫です。……酔いももうだいぶ覚めてますし」

それに、たぶん、アルコールの入った私に気を遣って運転してくれている。
普段の上条さんの運転をそこまで知っているわけでもないのに、気を付けてくれているのがわかるくらいには慎重な運転だった。

その優しさに胸が締め付けられる。

そう。上条さんは直接態度に出さないだけで、本当は優しい人だ。
だから、今日だってわざわざこうして迎えにきてくれたんだろう。

……と、今までだったら納得していたのに、今は疑問が残るのは、さっき掴まれた腕の強さや、上条さんが後藤に見せた苛立ちのこもった眼差しのせいだった。

『さっきの話の続きだが、女なら誰でもいいなら、こいつはやめろ』なんて、まるで――。

「そうか」

そうポソッと返し、前を向いてハンドルを握る上条さんの横顔をこっそり見つめる。

暗い車内。
ラジオが小さくかかっているだけなのでとても静かだった。

「なにかあったのか?」

唐突に聞かれ、首をかしげる。