高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



「俺だって別に高坂と男女の関係になりたいわけじゃないけど、さすがに目の前で振られたら可哀相じゃん。自己肯定感低くなってるときは、異性にドロッドロに甘やかされるのが一番だと思うから、お詫びに俺がそうしてやるべきかと思って」
「ドロッドロ……」
「ああ、心配しなくても、100%下心ないから。俺、割と誰でもいいけど、友達は大事にするから、男の本能とかで据え膳だから言ってるわけじゃなくて、完全に思いやり100%で提案してる」

私と後藤はお互いに恋愛感情はない。
だから、後藤がそう言う気持ちもわかるのだけれど、さすがに100%と断言されると微妙に腹立たしく思うものなんだな、と思いながら軽くため息をつく。

「変な気回さなくて大丈夫だから。それに私は、最初から振られてるのに勝手に好き好き言っているようなものだし、気にしなくていい……」
「――美波」

話している途中に、突然うしろから名前を呼ばれる。
咄嗟に見上げると、そこには上条さんが立っていて……あまりに驚きすぎて声を失った。

どうしてここに、と声になるより先に、私を見下ろしている上条さんが「酔っ払いが」と眉を寄せる。

「迎えにきてやった。立て」

腕を掴まれ強引に立たされる。
その感覚に、ようやく上条さんが幻でもなんでもなく、現実にここにいるんだと理解した。