高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―




「〝好きにしろ〟って言われちゃった。なんかごめん」

責める前に謝られ、しかも後藤が本気で悪く思っているような顔をするので、怒りの矛先が見つけられず、不完全燃焼をおこしながら水の入ったグラスに手を伸ばした。

「勝手に電話したことは大いに反省して。でも、上条さんの反応については別に……それが普通だから謝ってくれなくてもいいよ」

私だって、まさか〝ふざけんな〟だとか〝俺の女だ〟だとか、そんな返しは期待していない。
勝手に自分に想いを寄せている女が誰に持ち帰られようと、関係ないと考えるのは当たり前だ。

ショックを受けるほどうぬぼれているつもりはない。
上条さんは別に私を好きでも何でもないのは最初から知っている。

なのに後藤は、納得いかなそうに首を傾げた。

「高坂から聞いてる限りだと、そこそこ脈ありかなとか思ったからけしかけてみたんだけど……勘違いだったのかな。俺、こういう勘って鋭い方なのに。鈍ったのかなぁ」

首をひねっていた後藤だったけれど、そのうちに私に視線を移し、バツが悪そうな笑みで口を開いた。

「まぁ……なんか遠回しに振られたみたいになっちゃったし、もしあれなら俺が相手しよっか?」
「は?」

突然変なことを言い出され思いきり顔をしかめた私に、後藤が「いや、だってさ」と続ける。