「突然すみません。上条さんですよね。俺、高坂美波の同僚の後藤って言います」
まさかこんな時間に仕事の電話ではないだろうとぼんやり見ていて、後藤が発した言葉に驚く。
「え、待っ……今、上条さんって言……?」
「今、駅近くの〝デュパン〟っていうバーで飲んでるんですけど、高坂が仕事の人間関係でかなり弱ってキャパ超えて飲んじゃって。酔って〝上条さんに会いたい〟とか言ってて困ってるんですよね。でも、上条さんはこいつに構ってる時間なんてないでしょ? だからもうこの際、俺が連れ帰るしかないかなーとか思ってるんですけど……別にいいですよね?」
ペラペラ話す後藤に、一気に酔いが覚める。
よく見れば後藤が持っているのは私の携帯だ。つまり、後藤は私の携帯で上条さんに電話をかけていると……え、待って。え?
混乱しながらも眺めていると、それまでにやにやしていた後藤が真顔になり、そして「え、あー……そうですか。了解です」と苦笑いを浮かべる。
どんどん尻つぼみになっていった声を不思議に思いながらも携帯を奪い返すと、通話はもう切られていて、画面はトーク画面に戻っていた。
それにしても……と後藤をゆっくりと見る。
さっき〝俺が持ち帰ろうと思っている〟だとか〝いいですよね?〟だとか、どういうつもりなのか、上条さんを挑発するようなことを言っていた。
だから怒ろうとしたのに、後藤は眉を下げ、申し訳なさそうな笑みを浮かべていた。



