高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



「まぁ、高坂のは別だとしても、割り切るとかってもともとの性格が大きいんだろうな。上条さんもきっとそういうタイプなんだろ。ああいう立場のある人って、いちいち恋愛感情持つのとかって無駄だとか考えそうなイメージあるし」
「……そうかも。上条さんも、恋愛感情はよくわからないって言ってた」

『いまいち理解できなかった。だからか、恋愛感情がどんなものなのかそれからずっと気になっていて、そこにおまえが現れたから……ってところだな』

わからないから知りたいのかなとも思ったけれど、上条さんを見ている限りそういう素振りはない。
ことあるごとに好きだと告白する私を、ただ眺めているだけだ。

でも、私からしたら、ただ聞き入れてくれている状態でも十分幸せなのだけれど……と考え、カウンターテーブルにうなだれる。

上条さんを好きになってから、私は毎日楽しいし満たされている。でも、その先のビジョンがまったく浮かばず、自分がどうしたいのかがわからなかった。

ただひとつ、わかっているのは……。

ゆっくりと顔の向きを変えて後藤をにらむとすぐに視線がぶつかった。

「なんだよ」
「後藤が上条さんの名前なんか出すから、会いたくなっちゃったの」

責めるように言ってから、お手洗いに立つ。

薄暗い店内。カウンターの奥にある棚に並んでいるたくさんの瓶を綺麗だなぁと眺めながら席に戻ると、後藤は携帯を耳に当てていた。

壁掛けの時計がさすのは二十二時過ぎ。