高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―






「ちゃんと好きだってば。もう上条さんが何してても、〝あーもう好き〟ってなってるし。ただコーヒー飲んでるだけでも、風に髪が揺れただけでももうカッコいいし好きなの。でもさ、こういう感情はたしかに面倒かもしれないけど、それだけじゃないの。だから、割り切れる後藤を単純にうらやましいとは思わない」

口当たりのいい甘いカクテルを三杯飲んだところで、後藤からストップがかかった。
そこからは水を飲んでいるのに、回ったアルコールは相変わらず私を饒舌にしていた。

自分でも話しすぎだとわかっているのに止められないのだから、完全に酔っているんだろう。

「高坂だって片想いだって最初から割り切ってるじゃん」
「え?」
「片想いでいいから、触るなだのなんだの言ったんだろ?」

後藤に言われ口をつぐんだのは、最近、私自身も薄々感じていた部分だった。

『私は、上条さんが好きだから嬉しいです。抱きしめてもらえるのも、キスしてもらえるのも。一時でも、私に触れたいと思ってくれたなら、それだけで嬉しい』
『でも、それは本当に一時だけだってもう知ってるから。一時は嬉しくても、そのあとずっと苦しいって知ってるから……だから、しないんです』

出会って一週間が経った頃、上条さんに伝えた言葉がよみがえる。

今思えばたしかに、上条さんが想い返してくれる可能性を少しも考えていないようにも聞こえる。

別に私は永遠に片想いをしていたいわけじゃないのに、私が上条さんに向けた言動は片想いでいいと全身で伝えているようなものに思えた。