バーに向かう途中、後藤に水出さんの件を報告した。
もしかしたら、水出さんは後藤を好きかもしれない、と。だから私に冷たくなったのかもしれない、という可能性を説明したけれど、当の本人はまったく思い当たる節がないらしい。
「ないって。俺だって軽いなりに気は遣ってるし。社内で、しかもそこまでの年上なんて完全にない。さっき高坂に言われるまで意識に留めたこともなかったくらいだし」
「ふぅん。あれかな。普通に優しくて全然がっついてないところが逆に水出さんからしたら好印象だったとか……でも、そうだよね。水出さんが後藤に惹かれるなんて、普通に考えたらないか」
「おいこら。俺に失礼すぎるぞ」
ひとりで考え納得した私に、後藤が苦笑いを向ける。
「でも、水出さんって専務の娘で仕事もできるんだろ? それならたしかに俺なんかは恋愛相手には選ばないと思う。だって、真面目なのに俺を相手に恋愛なんかしようとしたら、わざわざ傷つきに飛び込んできてるようなもんだし、四十代っていう年齢考えても俺はないだろ」
カウンターに頬杖をついた後藤が私を見て続ける。
「まぁ、俺から見たら、本気の恋愛しているやつはみんな傷つきに行ってるように見えるんだけどな。高坂も例外じゃないし、その度胸はすごいと思うから、まいってるなら俺なりに励ましてやろうっていう気はあるってわけ」
意外にも本当に励まそうとしてくれている様子の後藤に驚き目を見張る。
そんな私を見た後藤が「まぁ、飲め飲め」と明るく笑うので、笑みを返してグラスに手を伸ばした。



