高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



「桃ちゃんも桃ちゃんだよな。普通、友達の好きな男に行くか? 面倒くさいことになるのなんか目に見えてるし、普通遠慮するもんじゃねぇの?」

わからなそうに言いながらグラスビールを飲む後藤に、口をとがらせる。

「桃ちゃんは、こうって決めたらまっすぐな子なんだよ。高校の頃からずっとそうだし、なにも恋愛に対してだけじゃないの。それは私もわかってるから……だから、仕方ないんだよ。むしろ、本当は上条さんが好きなのに私に遠慮して、気持ち内緒にされたらその方が嫌だったと思うし」

話しながら、気持ちを整理する。
たしかに私は、桃ちゃんに遠慮してほしかったわけじゃないんだと、自分自身納得しながら続ける。

「だから、落ち込んでいるのは桃ちゃんがどうこうじゃないし、誰かが悪いなんて思ってない。……ああ、誰も悪くないから、落としどころが見つけられなくてずっともやもやしたままだけなのかも」

先週の木曜日から引きずっていたもやもやの原因が判明した気がして、パッと勢いよく後藤を見る。
目を合わせたまま「うん。そうかも」と笑うと、後藤は呆れたように苦笑いを浮かべた。

「まぁ、そうやってドロドロしてないのは高坂らしいし、おまえがスッキリしたならよかったけど。とりあえず飲めよ。せっかくの俺のおごりなんだから」
「少しだけね。もうお酒は懲りてるから。それより、本当に水出さんに気を持たせるような真似してないの?」