高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



「はい。友達です」
「……驚かないんですね」
「はい。桃ちゃんから聞いていたので。今日、上条さんと会ってくるって。恋に積極的な子なんです」

そう説明すると、緑川さんは私の表情を観察するように見たあと、カップに手を伸ばす。

「積極的なんて言うと聞こえはいいですが、会社の代表番号に電話をかけてくるのはどうかと思います」

実は、桃ちゃんがどうやって上条さんに連絡を取ったのかは知らなかった。
土曜日、稲垣さんも含めて四人で会った際、上条さんと桃ちゃんが番号を交換した様子はなかったから、いったいどうやって……と思っていたのだけれど、緑川さんの言葉でその方法を知る。

会社に電話をかけて社長を呼ぶなんて、猪突猛進な桃ちゃんらしい。

「たしかに代表番号にかけるのはまずかったかもしれないですけど……それでも緑川さんは、私より桃ちゃんの方が上条さんに相応しいと考えてるんですよね」

緑川さんには、私はあの日すでに釘をさされているし、私だけじゃなく、上条さんに近づく女性全員を警戒しているのはわかっている。

でも、桃ちゃんに対してはきっと釘をさしたりはしていない。

それを確信しながら言った私に、緑川さんはわずかな間を空けたあと口を開いた。

「当たり前でしょう。彼女は佐々岡クリニックのご令嬢です。家柄も申し分ないですし、社長にとってどちらと付き合った方が有益かなんて比べるまでもない」

すがすがしいほどハッキリと言われ、笑みをこぼす。