高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



黒いストローでカフェラテを飲みながら言うと、意外にも緑川さんは「パワハラですか?」と興味を示すので、部長のパワハラセクハラのあれこれを簡単に説明する。

でも、もう慣れたものだと少し笑ったら、しかめっ面を返されたので、口を尖らせた。

「くだらないって思ってますよね。顔でわかります。でも仕方ないじゃないですか。上に報告したところですぐには動いてくれないし、上はきっと部長の肩を持つ。悔しいけど、そういうものなんです。私が色々準備に時間をかけて勇気を出して声をあげたところで、耳を傾けてくれる人なんてそうそういない。気に入らない上司ともうまくやっていかないと、潰されるのはこっちなんです」

ハッキリ言うと、緑川さんは「正直、くだらないとは思います」と認める。

「でもそれは高坂さんがどうこうではなく、会社側の意識の低さや、その部長に対して嫌悪を抱いているだけです。まぁでも、働いていれば面倒なことが色々あるのはわかります」

てっきり〝パワハラセクハラなんて受けても放置している側に問題がある〟的なことを言われると思っていただけに、すんなりと受け止められ拍子抜けする。

でも、そういえば緑川さんときちんと話すのはこれが初めてだ。
あの日は、最初から喧嘩腰だったしお互いヒートアップしていたから。

「高坂さんが落ち込んでいるのが珍しいと言ったのは、社長から高坂さんについて話を聞いていたからです。いつも明るくて常にコロコロ笑っているようなやつだと。もしかして、さっきみたいな話は社長にはしていないんですか? もう何度も会ってますよね」