高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



てっきり店員さんだと思い「ありがとうございます」と見上げ、目を見張った。

「う……っ」と、漏れそうになったうなり声を飲み込んだ私を見た緑川さんが、涼しい顔をして向かいの席に腰を下ろす。

テーブルの上に私のアイスカフェラテと、ホットコーヒーが置かれていた。

うわ……相席するつもりだ。
大変失礼だとは思うものの、緑川さんに対していい印象がかけらもないため、警戒していると、カップを持ち上げた緑川さんが釘をさすように言う。

「残念ながら社長は一緒ではないですよ」
「……知ってます」
「珍しく落ち込んでいるみたいですね。俺にまで聞こえるくらいの大きなため息をつかれていたので」

外を見ながら言われ、眉を寄せる。
緑川さんもスーツ姿のところを見ると、仕事帰りか、もしくは今も仕事中なんだろう。

ここは上条プロダクツのカフェだし、様子見に寄ったのかもしれない。

「緑川さんのなかで私のイメージがどうなっているのかはわかりませんが、別に珍しくもないですよ。私は結構感情の浮き沈みが激しいタイプですし、落ち込んだり弱ったりするのなんてしょっちゅうです。会社の同僚に嫌な態度とられただけで結構引きずっちゃいますし。今日だって上司にパワハラされてどんよりしてますし」