高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



「気にしてくれてたんですね」

まだどこか信じられない気持ちでそうつぶやく。

上条さんは未だ眉間にシワを寄せたままだった。
そんな彼の顔を見ているうちに、胸をじわじわと嬉しさが覆ってきて、真顔でいるのが我慢できなくなり、にやけだしたところで上条さんが言った。

「さっきの電話、イラッとした」

友達を紹介してほしいだなんて図々しいお願いだったのは承知の上だったので、イライラされても当然だと思ったけれど、上条さんが続けたのは別の理由だった。

「散々俺が好きだとか言ってたくせに、他の男を探してるのかと思ってイライラした。おまえの言い方が悪い」

両手の指をパンツのポケットにそれぞれひっかけたまま、不機嫌そうな表情と声で告げられる。

その態度は言葉通り、私が悪いと言っているようで、怒られているにも関わらず思わず笑ってしまう。

だって、こんな可愛く責められたら喜ばずにはいられない。
上条さんがイライラした理由が嫉妬に近いものだとわかったから、余計に。

私が他の男性を紹介してほしいと言ったら、イラっとしてくれるのかと思うと嬉しかった。

それが恋愛感情からくるものではなく、ただ単におもちゃを横取りされたような一瞬の苛立ちだとしても十分だった。