高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―



「私が上手に励ませたらよかったんですけど……どうしても異性じゃなきゃダメなときってあったりして。あ、もちろん私の力不足もあると思いますけど。でも、誰か男性……って考えたとき、恥ずかしい話、男性の知り合いってあまりいなくて。唯一親しい同期は女性関係乱れきってるし」

一度言葉を切ってから、笑顔を浮かべ口を開く。

「上条さんの友達だったら安心だと思ったんです。失礼なお願いをしてすみませんでした」

しっかりと頭を下げてから顔を上げると、上条さんは軽く息をついてから目をそらす。

「別に問題ない。おまえからなにか頼んでくるのは初めてだったし、気が向いたから応じただけだ。……どうでもいい電話だとかメッセージはしてきても、会いたいだとか、そういうことは言ってこないだろ」
「あ、でも、今週一度待ち伏せしましたよ。教えてもらったカフェで。会えたらいいなって」

こんなところを緑川さんに見られたら今度こそ立派なストーカーとして通報されそうだな、と思いながらも、仕事帰り例のカフェに一時間ほど立ち寄った。

時間もあるしもし会えたらラッキーだなというぐらいの気持ちで、もちろん連絡もしなかったので、残念ながら、というか、当然というべきか、上条さんは現れず私もそのまま帰路についたのが、今週の水曜日。

たとえ会えなくても、会えるかな?とドキドキしながら待つだけでも私にとっては十分だった……ものの。

こんな話はさすがにひかれたかな、と一抹の不安を感じていたのだけれど、上条さんは表情を崩さず「知ってる」と答えた。