「こんなお願いするの、すごく図々しいのはわかってます。でも、頼める人が上条さんしかいなくて……誠実で、女性に対して紳士的で優しい人がいいんですけど、上条さんの知り合いに誰かそういう人いないですか?」
懇願するように聞いた私に、上条さんは少し黙っていた。
それから『そういう男がいいのか?』とやけに慎重な声で確認するように聞かれるので、桃ちゃんのことを説明する。
いつも私を元気づけてくれる友達が失恋して自己肯定感がどん底まで落ちてしまっていること、だから桃ちゃんの気持ちを前向きにするために、包容力のある男性と楽しい時間を過ごさせてあげたいこと。
それを説明すると、上条さんはなぜかため息をつき『紛らわしいんだよ』と私を責めた。
「え、紛らわしかったですか?」
いったいどこが……と聞き返すより前に、上条さんが言う。
『とりあえずわかった。一時間後に行ってやるからおとなしくそこで待ってろ』
まさかのOKをもらい、電話は切れているのにしばらく携帯を耳から離せなかった。



