裸で海に抱きつくように横になっていると、「海くん焦らすつもり」という声と共にリビングのドアが開く音がした。

振り返り慌てるふりをしながら海のシャツだけを軽く羽織った。

「弥生さん、こんな時間にどうしたんですか?」

血の気が抜けるという言葉ぴったりなほど、白くなっている。

「わたしの方こそごめんなさい、ちょっと聞きたいことがあって時間も考えずに来てしまって」

「あの、こんな格好ですみません。それと、海は・・・・疲れてしまったようで、起こした方がいいですか?」

「結構よ、明日でも大丈夫だから」

「本当にすみません、海ったらこんな所で、誰かが来たら困るって言ったのに」

「わたしが悪かったわ、じゃあ」

弥生は慌てたように部屋を出て行った。

「スケスケのいやらしい下着をつけてたのに残念ね」

テーブルに残っている生ハムを食べながらワインを飲む。

「美味しい」

カメラ画面を見ると、弥生が部屋の物を投げたり倒したりしながら暴れている。

「クソ女!許さないから!」
と、叫んでいるが弥生こそ最低なクソ女だ。

髪を振り乱し、ガウンもはだけベビードールの肩紐がずり落ちてシリコン入りの不自然にもりあがった胸を揺らしながら叫んでいる姿が惨めで、見ているのも嫌になってきた。

カメラ接続を切ろうと思った時、何かが飛んできてカシャンという衝撃音とともに画面が暗くなった。

暴れすぎて隠しカメラに何かが当たってしまった。

「何よこれ」

バレた、どうしよう。
今乗り込んでくるだろうか?

接続を切ると動画をクラウドに保存した。

どうしよう、盗聴器も探すだろうか?
簡単には見つけられないと思うけど、次の掃除の時は外したほうがいいだろうか?
それとも、そのままにしてしらばっくれる方がいいだろうか?

今日はもう考えるのはよそう、見つかってしまったのは想定外だけど、何かあっても証拠は十分にある。

ソファの上で眠っている海の隣に横になると目を瞑った。

目が覚めた時、弥生のかわりに私が隣にいて驚くだろうな。

大声で笑いたいけど、気を張りすぎて疲れてしまった。


今日はもう

何も考えす

眠ろう



そう思ったのに、海の一言で眠気が吹き飛んだ。



「ナオ、トワ・・・ゴメン」