「部屋には入れてもらえない?」

両親への挨拶の前にお互いを知るために2回のディナーと今日はランチと映画を見た。いわゆるデートだ。
前回もやましい心があるからか、食事や映画ショッピングなどに連れて行ってくれていた。
忙しくて旅行にいけないからと気遣ってくれたことが嬉しかったが、今となれば義母との不倫を気づかれないようにするために必死だったんだろう。

最低だ。

以前はお互いの見たい映画を交互に選んだ、わたしは主にミステリで海はマーベルのようなヒーローものを好んだ。

上映中には手を繋いだりキスをしてくれたり、女性が喜びそうなことをしてくれた。
あの時の私は喜んだんだけど。

でも、今回はそんな甘いシチュエーションは必要ない。
今回、私が選んだ映画は「ミニミニモンスター」ミニモンが大好きで毎回映画を見ているという設定にしておいた。
さらに、ポップコーンのバケツにLLサイズのアイスコーヒーを持ち、一切、海の方を向かなかった。

でも、子供向けアニメを見ていると、大きくなった永遠がこれを見たかもしれないと思うと涙が流れてしまった。
画面では丁度、助けたミニモンとの別れのシーンだったから、海からみたら私は感受性豊かで感情移入しているんだろうくらいにしか思っていないだろう。


そして今、海が運転する車で部屋まで送ってもらったところで、部屋に入りたいオーラを出してきた。

「ごめんなさい、明日も早いし、とても疲れちゃって早く寝たいの」

「わかった、じゃあ」
海は手を伸ばして私の頬に触れそうになったところで体を引いて「おやすみなさい」と言ってドアを閉め百万ドルの笑顔で手を振った。

海は諦めたように片手をあげてから車を発進させた。