「新宮さん、ランチに行きませんか?」

火曜日と土曜日では工藤さん以外はメンバーがかなり違っていて、若い男性コーチに媚びを売るグループがいない。
そもそも、いくらコーチでも距離感が近すぎる。
岸や海のようなクズを知っているとあのコーチのあわよくば的な下心は見え見えだ。
そして、声をかけてくれたのは20代の女性のグループだった。

「ありがとうございます、ただ今日はこの後用事があってご一緒できないんですが、来週は誘ってください」

「じゃあ来週」

工藤さん達に挨拶をしてからテニススクールをあとにした。

コンビニでお茶とエクレアを購入すると、家の近くの公園に行き、ベンチに座ると弥生のベッドルームにある隠しカメラに接続した。

自宅のカメラはSDカードに録画するタイプだから、自宅であっている場合は見れないから、弥生の部屋で密会してくれる方が助かるし、自宅でされるのはすごく嫌だ。


「どれほど悔しかったと思うの」

イヤフォンをつけるといきなり弥生の声が聞こえてきた。

「ネクタイの事は悪かったよ、でも結婚しているんだ。仕方がないだろ、先日もこの話はしただろ、まだ蒸し返すならもう帰るよ」

ベッドの上に座っていた海が立ち上がろうとしたところに背後から弥生が抱きついた。

お互い服はちゃんと着ているからまだシテないのかもしれない。

「ごめん、怒らないで。今日は何の日か覚えてる?」

「いや」

「恋人記念日でしょ、10年前に初めて一つになった日でしょ」

「・・・・・・」

弥生は海の背後から手を足の付け根に這わしていく。

「奈緒さんがスクールに行ってくれて良かった。明日も会えるけど、どうしても今日したかったの」

無言の海のズボンのチャックを下ろしながら唇を合わせていく。

買ってきたエクレアを一気に頬張ると二口で飲み込み、お茶をのんだ。

弥生の顔が完全に海の足の間に埋もれているところで、動画を閉じて海の携帯に発信した。