白の姫に差し伸べられた、光と闇の手



建前があれば來樺院獅紋に近付いても怪しまれないし、ルームメイトが不愉快なことをされているところを見なくて済む。




「で、ですがそれでは瑠璃さまが……!」


「私は何をされても平気」




どうせ、大したことじゃないだろうから。

心からの言葉を聞いた類家胡桃は、息を呑んで、ぐっと唇を引き結んだ。




「……分かりました。わたしの力など些末ではありますが、類家家長女の名にかけて、瑠璃さまをお守り致します」




胸に手を当てて、類家胡桃は強い意志を宿した瞳を私に向ける。

思わず何度か瞬きをして、小首を傾げた。




「守られるのは、胡桃の方。多分、私の方が強い」


「そうかもしれません。ですが、力の強弱ではどうにもならないこともこの世にはあるのです。そういった時に、類家の名は多少なりともお役に立つはずです」