警戒心が強い……というよりは、臆病な彼女が自分から歩み寄ってくれたことを考えると、若干気分が良くなる。
「朝の女子達は……どうして胡桃に悪意を持ってるの?」
「……彼女達は、來樺院さんや港泰さまをお慕いしているのです」
「お慕い?」
意外な言葉が出てきて驚いた。
お慕いとはつまり、好きという意味でよかったはず。
來樺院獅紋や、芹羽港泰が?
「えぇ。ですが、瑠璃さまもご存知のように、お二方には婚約者がいますから……叶わぬ恋、なのです」
「……恋? 恋情を抱いてるということ?」
「はい」
人として好き、という類のものだと思っていた私は、しばし思考が停止する。
恋なんて全く無縁の世界に生きていたから、理解不能な超常現象に遭遇したような気分だ。