休み時間、類家胡桃と談話室で話すことになった私は、突然そわそわと恥じらうような様子を見せた類家胡桃を前に、内心困惑していた。
一体何が悪かったのだろう。
「あ、あの、よろしければ……瑠璃さまとお呼びしても、良いでしょうか……?」
頬をほんのり赤く染めながら、控えめに申し出る類家胡桃を少しの間見つめる。
どうやら、朝の一件でかなり気を許してもらえたらしい。
思ったことを言っただけなのだけど、と私は目を逸らした。
「好きに呼んでいい」
「では、これからは瑠璃さまとお呼びさせていただきますね」
類家胡桃はふわりと、どこか嬉しそうに微笑む。
婚約者である芹羽港泰を「港泰さま」と呼んでいることを考えると、“さま”づけは類家胡桃にとって親愛の証なのかもしれない。