どんな大層な家柄の人間だって、私の前では等しく死体になる哀れなターゲット候補でしかない。
そんな思考が顔に出ていたのだろうか、彼女達は私を見てビクッと震え、顔を青くした。
いけない。
生徒に紛れないといけないのに。
私はネクタイを手放して、類家胡桃に声を掛けようとした。
けれど、後ろから大きな声がして。
「お~い、黒塚さんに類家さん!」
「夜唄……?」
聞き覚えのある声に振り向くと、嘘くさい笑顔を浮かべて手を振っている翠笑こと楼燕夜唄と、無表情の來樺院獅紋がいた。
類家胡桃に絡んできた女子達は、「あっ……」と声を出してそそくさと逃げていく。
どっちを恐れたんだろう、と思いながら彼女達を見ていると、後ろにいた2人はこちらに近付いて来ていた。



