「ねぇ氷霞ちゃん、何か好きなものある?」
「……」
「僕は歌うのが好きなんだ。そういうの、あんまり興味無いかな?」
「……」
「あ、好きな食べ物は? ご飯は毎日食べるし、何かしらあるよね。嫌いな物でもいいよ?」
「……」
無口で素っ気ない氷霞ちゃんの気を引こうとして、僕は合同任務の度に色々話しかけた。
お菓子をあげたり、お花をあげたり、ナイフをあげたりもした。
全部見向きもされなかったけど。
「氷霞ちゃんの“殺し”は、いつ見ても綺麗だね」
「……人殺しに、綺麗も何も、無い」
いつも通り仕事を終えた後、褒めるつもりで言った言葉に、氷霞ちゃんは初めて反応した。
それは小さな、けれど芯の通った声で。
僕は、表情を変えずに人を殺す氷霞ちゃんが、本当は、心の無い殺人鬼なんかじゃないのかもしれない、と初めて思ったんだ。