Side:翠笑(すいしょう)


一目惚れだった。


ふわりと浮いた白い髪。

闇に浸かったような青い瞳。

たなびく白いマフラー。


背後で上がった血飛沫でさえも、彼女を引き立てる背景に過ぎなくて。

彼女の周りで舞う雪は、月明かりを受けてキラキラと光っていた。




「きれい……」




初めて、殺人現場を見て綺麗だと思った。

彼女の青い瞳が僕に向けられた時、心臓が早鐘を打って、血が沸き立つような感覚がした。




「……」




ふい、と逸らされた視線に胸が締め付けられて、慌てて彼女を追う。




「待って! 僕は翠笑(すいしょう)。君の名前は?」


「……氷霞(ひょうか)




目を合わせず、彼女はそれだけを口にした。



これが、僕と氷霞ちゃんの出会い。

お互い、12歳の時のことだ。


初めて合同任務を命じられたあの日から、僕と氷霞ちゃんは度々一緒に仕事をするようになった。