翠笑は納得したような、していないような、という様子だけど、本当に覚えていないものは覚えていないのだから、訝しまれても困る。
そんな思いで口を閉ざしていると、翠笑がピクッと動いて、ズボンのポケットからスマートフォンを取り出した。
ボスから指令のメールでも来たのかもしれない。
「……氷霞ちゃん。ちょっと問題が起こったみたい」
「何?」
「獅紋を狙う殺し屋がもう1人いる」
「!」
スッと心が冷めて、頭がクリアになる。
殺し屋としてのスイッチが入った。
私はスマートフォンを見つめている翠笑に、落ち着いて問いかける。
「ボスの指示は?」
「好きに対処していいってさ。但し、横取りは許すな、と」
「分かった。他の殺し屋を探して、先に始末しよう」
「うん。それじゃあ僕、情報収集しに行くね」



