「アハハ、そうなんだよね~。ほら、僕って愛想は抜群だけど、ずっと付き合うには向かない顔でしょ? 気味悪がられて、段々避けられちゃうんだ」
「抜群かどうかは知らないけど」
溜息混じりに返して、右手を伸ばす。
赤茶色の長髪を撫でると、翠笑は口を閉ざして、顔に貼り付いた笑みを自然なものに変えた。
同じ笑顔でも、こっちの方がずっといい。
「ありがとう、氷霞ちゃん」
「……これ、素の色?」
お礼の言葉には応えず質問をすると、翠笑は金色の瞳を柔らかく細めて私を見つめた。
「そうだよ。名前も本名。……変?」
「……いつもの方が、見慣れてる。けど……別に、変じゃない」
ボスだって、色んな姿に変わる。
髪と目の色が違うのは、大した変化じゃない。
翠笑はニコッと笑って、「氷霞ちゃんも黒髪似合ってるよ」と軽く言った。
「髪、触っていい?」
「いつも許可取らないでしょ」



