「一応聞くけど、ご飯は食べた?」
「食べた」
「よかった。氷霞ちゃんってほっとくと人間らしい生活しないから。寮生活になってちょっと安心したよ」
「余計な心配しなくていい。1人でも食事くらい摂る」
翠笑とは13歳の時から一緒に暮らしているせいか、生活について鬱陶しいくらい心配される。
13歳までだってボスに貰った家で一人暮らしをしていたのに、15歳になってまた一人暮らしすることにどんな不安要素があると言うのか。
翠笑はニコニコ笑ったまま、片付けを終えたその手を私の頭に伸ばし、わしわしと髪を拭いた。
「氷霞ちゃんの場合はほんと最低限でしょ。片付けも家事もできなくて……あぁ、僕がお世話しないと、この子ダメになっちゃう……!」
わざとらしく悲痛な声を出す翠笑を半目で睨む。
こんな時でもその顔は笑顔だ。
翠笑は私以上に表情が変わらない。



