慣れないことばかりで、気が抜けなかった。
「……」
ベッドに寝転んでぼーっとして、そのまま眠ってしまうのもいいかもしれない。
そんなことを考えながら、吸い寄せられるようにベッドに近付く。
……あぁ、そうだ。翠笑とはいつ話そう。
ぼーっとベッドの前に立ち尽くしていると、部屋の右側……窓のある方から、声が聞こえた。
「やっほー、黒塚さん。お邪魔しまーす。な~んて」
「夜唄……」
バッと振り向くと、丁度窓から不法侵入している翠笑……否、赤茶髪金目の楼苑夜唄がいた。
日中とは違い、ラフな私服姿だけど、その顔には相変わらず嘘くさい笑顔が貼り付いている。
「氷霞ちゃんに名前で呼ばれるとドキドキしちゃうな〜」
「……誰。私は黒塚瑠璃だけど」
呑気な様子と、当たり前のように不法侵入してきたことにイラッとして、そっぽを向く。



