おずおずと聞く類家(るいけ)胡桃(くるみ)を見て、少し考えてから頷いた。

ほっとしたように微笑む顔は、なんだか見ていてむず痒くなる。


……一線は引いたままでいないと。



一緒にいて話が弾むような仲でも無いので、私は私室にこもって荷解きをした。

時間が来たら類家胡桃と寮1階の食堂に行き、夕飯を済ませる。




「あ、ごめんなさい……」


「……いえ」




空になった食器を乗せたトレーを返却口に持っていく途中、同じくらいの背丈の女子とぶつかった。

私は言葉少なく返答し、こちらを振り返っている類家胡桃の元に行こうとして、ふと違和感を抱く。


それが何か、明確には分からない。

けれど、何かが気になって、ぶつかった女子の姿を追うように後ろを向いた。


背中の中程まである長い黒髪。

それ自体は、特に変わっていないのだけど。




「……」