白の姫に差し伸べられた、光と闇の手



殺した本人が死者を悼むなんて相手はたまったものじゃないだろうけど、“自己満足でもいい”と言われたからずっと続けている。




「終わった」




指令通り、派手な有様となった会議室の扉を開けて廊下に声を掛けると、長髪を後ろで1つに束ねた仕事仲間が振り向く。

赤髪紫目、貼り付いた嘘くさい笑顔が特徴の男子。


殺し屋翠笑(すいしょう)。風と音魔法の使い手だ。




「了解。お疲れ~、氷霞(ひょうか)ちゃん」




ニコニコと笑いながら軽い調子で答えるその声は、先程イヤホンから聞こえたものと同じ。




「確認。済んだら帰る」


「ハイハ~イ、ドライな氷霞ちゃんも好きだよ。それじゃあ鑑賞させてもらいましょうか」




部屋の中を指さすと、翠笑は軽口を返して会議室に入る。

今は魔法が解除されて、歩き回る翠笑の足音や、衣擦れの微かな音が違和感無く聞こえた。