「必要無いかもしれませんが……もし授業についていけなかったら、わたしのノートをお見せするので、遠慮無く仰ってくださいね」


「うん。ありがとう」




お礼を言うと、類家(るいけ)胡桃(くるみ)は、はにかんで笑う。

彼女の婚約者の芹羽(せりう)港泰(こうだい)は、チャイムで中断された話の続きがしたいようで、口元に笑みを湛えながら私を見下ろした。


同じ笑顔でも、受ける印象は三者三様だ。




「それで、質問の答えは?」


「簡単。知らない人間とは関わりようが無い」


「つまり無関係だと?」


「うん。白蓬(はくほう)李璃(りり)なんて名前も存在も、今日初めて知った」




授業中に改めて考えて、白蓬李璃を安易に利用するのは危険だと判断した。

情報も無いのに関係があると偽ってはすぐにボロが出る。


だからと言って、利用しない手はないけど。


私はこれから白蓬李璃の情報を集めて、來樺院(らいかいん)獅紋(しもん)がまた疑念を持つように、白蓬李璃の素振りを真似るつもりだ。