「ふむ、よい意見だ。両方の答えが出たが、他に意見がある者は?」
教室を見回す男性と、手を挙げないクラスメイトを見て、私は発言をしてみることにした。
他の生徒に倣って手を挙げると、男性は私を見て「転校生か。黒塚だったな」と言いながら私の発言を許可した。
クラスメイト達は振り向いて私を見る。
來樺院獅紋は無反応、翠笑はいつも通りの嘘くさい笑顔だ。
「対象物の硬度は関係無い。融解魔法で溶かせないのは、気体と液体だけ」
淡々と答えると、男性は感心するような顔をした。
「ほう。素晴らしい答えだ。その通り、融解魔法に於いて、対象物がどれだけ硬いかは問題にならない。何故かと言うと……」
男性は教科書の内容を交えて解説する。
とっくに理解している内容なので、私はそれを聞き流しながら、こうやって授業に参加していれば怪しまれないかな、と別のことを考えた。



