「私は……」




來樺院(らいかいん)獅紋(しもん)の婚約者、白蓬(はくはう)李璃(りり)と関係があるのでは無いか、という芹羽(せりう)港泰(こうだい)の質問に口を開く。

しかし、私が答えを告げる前に、チャイムの音が教室に響いた。




「ざ〜んねん、時間切れみたいだね」


「おっと不味い、席に戻らなきゃな。答えは休み時間に聞くわ」


「それでは、また後で」




翠笑(すいしょう)の言葉を皮切りに、芹羽港泰も類家(るいけ)胡桃(くるみ)も別れの言葉を告げて自分の席に戻る。

パチ、と瞬きをひとつして、一番席が近い翠笑を見ると、イスを引きながらウインクをされた。


時計に目を向けると長針は8の真上、では無く、僅かに右を指している。


どうやら、あのチャイムは翠笑の魔法によるフェイクだったらしい。

充分に考える時間を稼いでくれたようだ。


わざわざ教室で魔法を使わなくてもいいのに。

……一応、後でお礼は言っておこう。