2人の言葉を聞き、改めて來樺院獅紋を見た。
窓際の後ろから2番目の席に座り、頬杖をつきながら窓に顔を向けている。
私が教室に入った時と同じだ。
「有名と言えば、有名な話なんだが。來樺院の婚約者……白蓬李璃は6歳の時に姿を消して、以来ずっと行方不明なんだ」
「行方不明?」
「昔、ちょっとした事件があってな。生死も分からない」
「來樺院さんは今も婚約者を捜しているという噂で……」
類家胡桃は胸に手を当てて目を伏せる。
あの様子では、その噂は事実なのだろう。
行方不明になった婚約者。
6歳までどこに、と聞いたのは、白蓬李璃が6歳の時に消えたからか。
理由が分かって落ち着いた。
私がボスに拾われて、まともな生活ができるようになったのも6歳の時。
親に捨てられてひとりぼっちだった時のことなんか、思い出したくもない。



