李璃ちゃんと獅紋は、生まれる前から婚約してたようだけど、僕と李璃ちゃんも出会う前から“相手”として用意されていたらしい。
薄情だけど、この人なりの愛情がある。
ボスは、そういう人だ。
「今日のことで、俺は氷霞に随分嫌われたらしい。憎しみはいい殺意になる。俺としては満足のいく結果だ」
「……ボスを殺せってやつ?」
「あぁ。師を殺してこそ、弟子は一人前になる。ところが夜唄、お前には俺に対する殺意が無い」
「僕は純粋な子供だから、そう簡単にボスを嫌いにはなれないんだよ」
李璃ちゃんの眠りを妨げないように、僕達の話し声を遮断しながら、サングラスで隠れたボスの顔を見る。
ボスは笑って、「だから理由を作りに来た」とサングラスを外した。



