当の來樺院獅紋は、落胆し生気までをも失ったような様子で、溜息を吐く。
婚約者。白蓬李璃。人違い。
……一体どういうこと?
「邪魔をしてすまなかった」
それだけ言って背を向けようとする來樺院獅紋に、不快感の名残が口から飛び出た。
「聞くだけ聞いて、自分は何も話さないの?」
「……來樺院獅紋だ。得意な属性は火、雷、鉱物、風。よろしく」
「そう。よろしく」
私を流し見る緑の瞳は、驚いたように少し見開く。
何に驚いたのかと考えて、得意属性に驚く振りをするのを忘れたと思い当たった。
今から訂正するのも怪しい。
向こうから追求してくるようなら、誤魔化そう。
そう考えたものの、來樺院獅紋はじっと私を見つめた後、興味を無くしたようにあっさりと目を逸らし、窓際の席に戻った。