Side:楼苑(ろうえん)夜唄(ようた)(翠笑)


今日一晩で精神力を使い果たしてしまったのだろう、李璃(りり)ちゃんは僕の腕の中で眠りに落ちてしまった。



あの時、獅紋(しもん)を選んだ李璃ちゃんを見て、冷たく、大きな恐怖に襲われた。

ボスは僕に、李璃ちゃんの仕事ぶりを見ている、と圧をかけてきたから。


けれど、キスをしながら獅紋の背中を氷のナイフで刺した李璃ちゃんには、死ぬほどホッとした。

仲のいい友達が死ぬというのに。




僕が李璃ちゃんの心を支えているという自負はあったし、僕自身李璃ちゃんに支えられて、頭の中が李璃ちゃんでいっぱいと言えるほど惚れ込んでいた。


だけど、今日の出来事で、これ以上嵌る深みがあったのかと思えるくらい、僕は李璃ちゃんのことを、もっと好きになってしまった。