「愛してる、氷霞」
耳元で吐かれた艶やかで甘い声は、今までなら酔いしれていただろう。
けれど、今となってはただ不快でしかない。
「嫌っ、触らないで! もう騙されない! あなたの思い通りに動いたりなんてしないから!」
「それは残念だ、本当に可愛がっていたのになぁ……俺が憎いか? 氷霞」
「その名前で呼ばないで。憎いに決まってる!」
私が抵抗すると、千化はあっさり離れて口元に笑みを浮かべた。
私は後ずさって翠笑の手を握りながら、千化を睨む。
「可愛い俺の娘。それなら俺を殺してみろ」
「私はあなたの娘じゃないっ!」
挑発に乗って吹雪を纏うと、すぐに消され、服の中に残っている暗器を取り出して、心臓を狙った。
けれど千化は私の手首を捻って暗器を落とさせ、私の頭にぽんと手を乗せる。



