ボスが好んでいるのかよく見る容姿だから、それがボスだと言うことはすぐ分かり、その言葉に驚愕した。
遅れて、ボスがいる扉の方を見た翠笑も、驚きと恐怖が混じった声を発する。
「うそ、それじゃ……っ」
私が翠笑を庇おうとすると、翠笑にきつく抱き締められて動けなくなった。
「言っただろう? 及第点だ。急所からはズレたが、殺す意思を見せたから試験は合格。罰は無しだ」
「「……え……?」」
翠笑と2人で、間の抜けた声を出してしまう。
てっきり、殺し損ねたから翠笑が殺されてしまうと思ったのだけど……。
「あそこからよく口説き落としたな、翠笑。氷霞も、ハニートラップを自力で考えついたのは偉いぞ」
月明かりに照らされたボスの口元は弧を描いていて、目を疑う。
私達を褒める言葉を処理できたのは数秒遅れてからで、私は恐る恐る口を開いた。



