空中で翠笑に抱き締められると、後ろから潮捜査官の怒声がして、魔導警察がどうして、と驚いた。
けれどすぐに、獅紋くんに電話が掛かってきていたことを思い出し、あれのせいだと直感する。
また重力魔法を使われたら、逃げるのが困難になる。
潮捜査官と戦闘する覚悟を決めると、また目の前が真っ暗になって、私達は男子寮の裏では無く、どこかのビルの屋上に移動していた。
「うわっ、と、あっぶな~……」
「っ……ボス?」
地面までの距離が変わって、翠笑が慌てて風魔法で着地の衝撃を和らげる。
私は翠笑に抱き締められて寝転んだまま、覚えのある現象にすぐ辺りを見回した。
「まぁ、及第点だろう。ターゲットは殺し損ねたようだが」
「なっ……!?」
ビルの中に通じる扉の前に立っていたのは、スーツにシルクハット、サングラスをかけた赤茶髪の男性。



